2026年10月01日
土づくりや家庭菜園に関心を持つと、「微生物資材って、自分でも作れるの?」、「自作できるなら、わざわざ市販品を買う必要はある?」、「自分で作るものと、市販品では何が違うの?」 といった疑問にぶつかることがあります。その入り口としてよく名前が挙がるのが、愛媛県で開発された「えひめAI」です。ヨーグルトや納豆など身近な材料で家庭でも作れる「えひめAI-2」がある一方、企業が製造・販売する「えひめAI-1」の製品も劉注しています。
この記事では、えひめAI-1・AI-2を入り口に、自作する微生物資材と市販の微生物資材の違いを、原料・製造・コスト・使いやすさなどから比較します。
目次
サクッとチェック!この記事でわかる重要ポイント
- えひめAI-1とAI-2の違い:えひめAI-1は産業用として開発された環境浄化微生物、えひめAI-2はそれを家庭でも作れるよう改良したものです。材料や入手方法は異なりますが、使っている微生物や基本的な仕組みは共通しています。
- 材料費だけなら自作が圧倒的に安い:えひめAI-2の材料費は1Lあたり数十円程度で、市販のえひめAI-1(大容量パックでも1Lあたり1,000円超)と比べて1/10以下です。ただし培養の電気代や自分の作業時間を考えると、差はやや縮まります。
- 「効果」はどちらが高いとも言い切れない:使っている微生物自体は共通のため、自作と市販品で優劣がはっきり決まっているわけではありません。実際の効果を左右するのは、濃度や使用量、使う場面など条件面です。
- 選ぶ基準は「自作か市販か」ではなく「自分の使い方に合うか」:どれくらいの頻度で、どのくらいの量を、どんな用途に使いたいかを先に整理すると、自作で十分か、市販品のどの容量を選ぶべきかが見えてきます。
微生物資材は自作できる!?
微生物資材の効果は認めつつも、価格の高さがネックだと感じる人は少なくありません。実は、自分で作れる微生物資材もあります。その代表格が、愛媛県産業技術研究所が開発した「えひめAI-1」を家庭向けに簡略化した「えひめAI-2」です。ここでは、えひめAI-2の作り方と、元になったえひめAI-1との違いを見ていきます。
そもそも、えひめAIとは?
えひめAIは、愛媛県産業技術研究所(旧・愛媛県工業技術センター)が開発した環境浄化微生物です。宇和海の水質浄化や排水対策を目的に研究が始まり、産業用の「AI-1」と、それを家庭でも作れるよう改良した「AI-2」の2種類があります。まずはこの2つの違いから見ていきましょう。
えひめAI-1とえひめAI-2は何が違う?
えひめAIは、愛媛県産業技術研究所が開発した環境浄化微生物です。宇和海の浄化や工場・生活排水対策を目的に研究が始まり、酵母(パン酵母)・乳酸菌・納豆菌を糖蜜で発酵培養した液体として生まれました。これが「えひめAI-1」で、事業者や自治体が製造・配布する産業用の位置づけです。
これを家庭でも作れるよう改良したのが「えひめAI-2」です。納豆・ヨーグルト・ドライイースト・砂糖など、身近な食品で3種類の微生物(納豆菌・乳酸菌・酵母)を取り入れる設計になっています。鬼北町公式サイトによると、製造方法や材料には違いがあるものの、効果は同様とされています。
| 項目 | えひめAI-1 | えひめAI-2 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 産業用(宇和海浄化・排水対策が発端) | 家庭用(AI-1を簡略化) |
| 材料 | 酵母・乳酸菌・納豆菌を糖蜜で培養 | 納豆・ヨーグルト・ドライイースト・砂糖を水で培養 |
| 入手方法 | 許諾事業者の製品/自治体の配布 | 自分で作る(「えひめAI-2」名での販売は不可) |
| 注意点 | 環境用資材。飲用・人体への使用不可。農薬登録なし | 同左 |
どちらも環境用の資材であり、飲用や人体への使用はできません。また農薬登録はないため、病害虫の防除目的では使えない点は共通です。
えひめAI-1は農業以外でも利用されている
えひめAI-1は農業資材としてだけでなく、悪臭対策や水質改善にも使われています。鬼北町では河川浄化を目的に培養液を製造し、町内の畜産農家や一般家庭に無料配布しており、合併浄化槽への投入も進めています。設置者や管理業者からは「悪臭が減った」「汚泥が少なくなった」という声があり、浄化槽での使用量は2週間に1回250cc程度が目安とされています(使いすぎるとかえって汚泥が増えるおそれがあります)。
業務用途では、東レコムズ愛媛株式会社が、活性汚泥方式の設備に原水流量の0.01〜0.1%を連続または間欠で投入する方法を紹介しています。効果が出るまでには多少の時間がかかり、使用環境に応じた調整が必要になる点も共通しています。
えひめAI-2を自作してみよう!
えひめAI-2は、納豆やヨーグルトなど家庭で簡単に準備できる材料で作れます。ここでは、愛媛県産業技術研究所が公開している500mL分のレシピを基本に、材料・作り方・自作ならではの注意点を見ていきます。
えひめAI-2の材料
| 材料 | 500mL分の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 納豆 | 1粒 | 粘液でも可 |
| ヨーグルト | 25g | 飲むヨーグルトも可 |
| ドライイースト | 2g | ベーキングパウダーは不可 |
| 砂糖 | 25g | 白砂糖・三温糖など |
| 水道水 | 約450mL | とぎ汁も可 |
材料は、納豆・ヨーグルト・ドライイースト・砂糖・水の5つだけです。えひめAI-1が酵母・乳酸菌・納豆菌を糖蜜で発酵培養した液体であるのに対し、AI-2ではこの3種類の微生物を身近な食品から取り入れます。ヨーグルトが乳酸菌、ドライイーストが酵母、納豆が納豆菌の供給源になり、砂糖はその微生物たちのエサ(栄養源)という役割です。
えひめAI-2の基本的な作り方
えひめAI-2づくりは、混ぜる→温める→待つ→確かめる、という流れです。愛媛県の資料に沿うと、次の手順になります。
①500mLのペットボトルに、納豆・ヨーグルト・ドライイースト・砂糖をはかり入れる
②水道水を約450mL加え、手でよく振って混ぜる(ミキサーでも可)
③30〜40℃で1週間培養する。発酵でガスが出るため、蓋は必ずゆるめておく
④pH試験紙で状態を確認する。開始時は4〜5、1週間後に3〜4まで下がり、パンやお酒のような発酵臭がすれば成功。培養後はヨーグルト成分などが底に白く沈殿する⑤冷暗所で保存し、3か月を目安に使い切る。使う際は全体をよく混ぜる
材料を用意
(納豆・ヨーグルト・イースト・砂糖・水)
混ぜる
(ペットボトルに入れ、水を加えて振る)
一定温度で培養
(30〜40℃で1週間程。蓋はゆるめる)
発酵状態を確認
(pH3〜4・発酵臭があればOK)
完成・保存
(冷暗所に保存し、3カ月を目途に使い切る)
※数値は愛媛県資料の500mL版に基づいています。
えひめAI-2の作り方は、こちらの動画も参考になります。
米ぬか・納豆より優秀?家庭でもできる微生物活性資材の作り方【家庭菜園 ガーデニング 土づくり えひめAI】
えひめAI-2を自作するときに確認しておきたいポイント
えひめAI-2は、材料を混ぜたら終わり、ではありません。温度を30〜40℃に保ち(夏場は直射日光下でも可)、1週間待ち、pHと発酵臭で状態を確かめるところまでが自作の作業です。「思い立った日に作って、その日に使う」ことはできない点は、市販品との大きな違いになります。腐敗臭がする場合は雑菌が繁殖しているサインなので、容器や器具を洗い直してやり直しましょう。
完成後は冷暗所で保存し、3か月を目安に使い切ります。えひめAI-2はAI-1と同じ用途で使え、庭の野菜や草花には500〜1,000倍に薄めて散布するのが目安です。使う量が多い場合は、鬼北町公式サイトにある10L分の二次培養レシピ(一次培養液約1Lにドライイースト40g・砂糖500g・水約9Lを加えて再培養)で増やすこともできますが、家庭で使う量なら500mLの少量仕込みで十分なことも多いはずです。
なお、AI-2は家庭などでの個人使用が前提で、「えひめAI-2」の名称での販売はできません。環境用資材のため飲用・人体への使用は不可で、農薬登録もないため病害虫防除の目的では使えない点は、AI-1と共通です。
自作したら本当に安い?材料費を計算してみた
「自作なら安い」というのは感覚的にはわかりますが、実際どれくらい安いのか、材料費から計算してみます。
500mLレシピの材料を、スーパーで買える実勢価格に当てはめると、次のようになります。
【表①】
| 材料 | 使用量 | 参考単価 | 500mL分のコスト |
|---|---|---|---|
| 納豆 | 1粒(粘液も可) | 3パック約70〜100円 | 約5〜10円 |
| ヨーグルト | 25g | 400g入り約146〜170円 | 約9〜11円 |
| ドライイースト | 2g | 100gあたり約300〜700円 | 約6〜14円 |
| 上白糖 | 25g | 1kgあたり268.5円 | 約7円 |
| 水道水 | 約450mL | ほぼ0円 | 1円未満 |
合計すると、500mLあたり約27〜42円です。納豆とドライイーストは銘柄によって価格差が大きく、業務用の安価なパックを選べば下限に、こだわりの商品をそろえれば上限に近づきます。上白糖については、農畜産業振興機構が公表している全国平均小売価格(1kgあたり268.5円)を使っているため、ここはほぼ変動のない数字です。
ここに、季節によって発生するコストが加わります。夏場は直射日光下で培養できるため電気代は0円ですが、冬場に熱帯魚用ヒーターなどで1週間保温すると、70〜100円程度が上乗せされます。さらに、材料を量って混ぜる実作業(10〜15分程度)を時給換算すると、自分の時間コストとして300円台が加わります。これらをすべて足しても、500mLあたりの実質コストはおおよそ100〜500円の範囲に収まります。
一方、市販品のえひめAI-1は、容量が大きいほど1Lあたりの単価が下がる価格設計です。
【表②】
| 種類 | 1Lあたりのコスト |
|---|---|
| 自作(えひめAI-2・材料費のみ) | 約54〜84円 |
| 市販品(えひめAI-1・1L、送料込み) | 約2,682円 |
| 市販品(えひめAI-1・5L) | 約1,320円 |
| 市販品(えひめAI-1・18L) | 約1,100円 |
材料費だけで比べると、自作は市販品の大容量パック(18L)と比べても約1/13〜1/20という結果になりました。電気代や作業時間を加えても、この差が逆転することはありません。「自作の方が安い」という結論は、内訳を細かく見せても揺らがない、というのがここでの結論です。
ただし、これはあくまで価格の話です。「効果」まで自作の方が優れているとは限りません。次の章で、この点を整理します。
「効果」はどちらが高い?一概に比較できない理由
自作と市販品、どちらが効果は高いのか。これはこの記事で一番聞かれそうな質問ですが、結論から言うと単純に比較はできません。
まず、えひめAI-1もAI-2も、使っている微生物そのものは同じです。酵母・乳酸菌・納豆菌を発酵培養する仕組みは共通で、鬼北町公式サイトも「製造方法や材料に若干の違いはあるものの、効果は同様」としています。ただしこれは、両者を並べて比較した試験データに基づく説明ではなく、開発の経緯を踏まえた町の説明にとどまります。つまり「AI-1とAI-2、どちらが優れているか」を検証した公的なデータは、現時点では見当たりませんでした。
その上で、実際の効果を左右するのは、どちらの製品かということ以上に、使い方の条件です。培養液の濃度や希釈倍率、使用量、使用頻度、そして何に使うか(庭の土なのか、堆肥なのか)によって、体感できる効果は大きく変わります。
自作の場合はさらに、室温や材料の鮮度、雑菌の混入具合によって培養のたびに仕上がりが揺れるという変数も加わります。ただ、市販品はここが工場での品質管理によって一定に保たれているため、ばらつきが少ない、というメリットはあります。
つまり比較すべきは「どちらが強いか」ではなく、「自分の使い方で、安定して同じ結果が得られるか」です。次の章では、この観点から自作と市販品それぞれに向いている人を整理します。
自作と市販品、どちらを選ぶ?
ここまで見てきたように、材料費だけなら自作が圧倒的に安く、効果はどちらが優れているとも言い切れません。つまり最終的な決め手は、価格や成分の違いそのものよりも「自分がどれくらいの頻度で、どのくらいの量を、どんな用途に使いたいか」です。ここでは、そうした使い方の条件から、自作と市販品それぞれが向いている人を状況別に整理します。
自分で作ることを楽しみたい人
培養する過程そのものに興味がある人、材料を自分でそろえて試行錯誤したい人には自作が向いています。まずは少量の500mLから始めて、pHや発酵臭の変化を確かめながら慣れていくのが良さそうです。ただし、思い立ってすぐには使えず、1週間の培養期間が必ず必要になる点は、前提として理解しておく必要があります。
手軽に使いたい人
培養する時間がない人、保管や温度管理の手間をかけたくない人には市販品が向いています。えひめAI-1は届いてすぐに使え、品質も一定に保たれているため、「思い立ったときにすぐ使いたい」というニーズには自作より確実に応えられます。
広い面積に使いたい人
家庭菜園程度の少量であれば、自作の価格優位は圧倒的です。ただし、使う量が増えるほど話は変わってきます。えひめAI-1は容量が大きくなるほど1Lあたりの単価が下がる価格設計になっており、18Lなら1Lあたり約1,100円まで下がります。一方、自作で大量に作るには、鬼北町の二次培養レシピを使って何度も培養を重ねる必要があり、そのぶん管理の手間も増えます。家庭菜園なら自作、畑や広い庭で継続的に使うなら市販品の大容量パックも選択肢に入ってくる、という判断になりそうです。
特定の目的に合わせて選びたい人
えひめAI-1・AI-2は、庭の土づくりだけでなく、浄化槽のにおい対策や配管のぬめり取り、家畜糞尿の堆肥化促進など、幅広い用途に使えます。鬼北町の実績では、浄化槽への投入は2週間に1回250cc程度が目安とされており、日常的に少量を使い続ける用途には自作でも十分対応できます。逆に、堆肥舎や広い排水路など、まとまった量を一度に使う場面では、品質が安定した市販品の大容量タイプの方が扱いやすいでしょう。
まとめ:微生物資材を選ぶときは『自作か市販か』だけで決めない
えひめAI-1とAI-2を入り口に、自作と市販の微生物資材を比較してきました。材料費だけを見れば自作は圧倒的に安く、数十円で作れます。一方で効果そのものはどちらが優れているとも言い切れず、実際に差が出るのは「安定して同じ結果を再現できるか」という部分でした。
ここから言えるのは、微生物資材選びで最初に決めるべきは「自作か市販か」ではなく、①何に使うか(土づくりか、堆肥か)、②何が入っているか(微生物の種類や原料)、③どれくらいの量を使うか、④その頻度でどれだけ使い続けられるか、という4つの条件だということです。この4つが定まれば、自作で十分なのか、市販品のどの容量を選ぶべきかが自然と見えてきます。えひめAIはその判断軸を体感するための、身近な入り口と言えそうです。
「えひめAI-1」に関するよくある質問
えひめAI-1とえひめAI-2は、効果に差がありますか?
製造方法や材料には違いがありますが、鬼北町公式サイトによると、効果は同様とされています。ただし、これは開発の経緯を踏まえた説明であり、両者を比較した試験データが公開されているわけではありません。実際に差が出やすいのは「どちらを選ぶか」よりも、濃度や使用量、使う場面によるところが大きいです。
えひめAI-2づくりに失敗すると、どうなりますか?
腐敗臭がする場合は、雑菌が繁殖しているサインです。成功の目安は、1週間後にpHが3〜4まで下がり、パンやお酒のような発酵臭がすることなので、これと違う匂いがしたら、容器や器具を洗い直して作り直すのが安全です。
飲んだり、肌につけたりしても大丈夫ですか?
いいえ、できません。えひめAI-1・AI-2はどちらも環境用の資材で、飲用や人体への使用は行わないよう案内されています。台所や浴室で使う際も、直接肌につけるのではなく、洗い流す・つけ置きするといった使い方が基本です。
病害虫を防ぐ目的で使えますか?
使えません。えひめAI-1・AI-2は農薬登録を受けていないため、病害虫の防除を目的とした使用はできません。生育促進や土づくり、堆肥化の促進といった用途にとどめる必要があります。
自作したえひめAI-2は、どのくらい保存できますか?
冷暗所で保存し、3か月を目安に使い切ります。作った分をすぐに使い切れない場合は、鬼北町の二次培養レシピで必要な分だけ増やすより、家庭で使う量に合わせて500mLの少量仕込みを繰り返す方が、使い切れずに余らせるリスクは少なそうです。
